ノクティルックスとは(英語: NOCTILUX)とは、ライカ レンズ群のうち、 F0.95~F1.25レンズの名称を言う。ノクチルックス、ノクティルクス、ノクチ、または野口くんとも呼ばれる。現在新品で購入できる現行版のノクティルックスレンズは、LEICA NOCTILUX-M 50mm f0.95 ASPH、LEICA NOCTILUX-M 75mm f1.25 ASPHである。
現行版(第四世代) LEICA NOCTILUX M f0.95 50mm ASPH (実売価格 約130万円) ⇒ノクチ作例
初代 noctilux(ノクティルックス) 50mm f/1.2は、発売当時世界初の非球面レンズを利用したレンズとして話題になった。初代ノクティルックスの中でも初期のタイプは、レンズ職人の手磨き仕上げの非球面レンズが使われており非常に希少価値がある。中古レンズ価格は高騰しており約70万円~320万円程度。買いたくても手が届かない。レンズフード「#12503」だけで30~40万円程度(レンズ無し、フードだけの価格)で販売されるほど希少である。
LEICA 50mm NOCTILUX f1.2 1st Version Asph Aspherical M LENS
製造年:1966年~1976年
製造本数:約2000本
レンズ構成:4群6枚
最小絞り:f16
最短撮影距離:1m
レンズフード: #12503
初代ノクティルックス50mmレンズの中でも初期型は、職人により手磨きで仕上げられたもので特に価格が高額である。後期型は機械研磨されたとされる。
LEICA 50mm NOCTILUX f1 2nd Version M LENS
製造年:1976年~
製造本数:不明
レンズ構成:6群7枚
最小絞り:f16
最短撮影距離:1m
フィルター径:58mm、60mm
フード:#12519、#12539、#12544
ASPH(Aspherical、非球面)レンズは使われていないがf1を達成。中古レンズの実勢価格は約60万円~80万円程度。光学系の設計は同じまま、外径の違い、フードの違い、刻印違いなど、くつかのバージョンが存在する。
製造年:1994年~
製造本数:不明
レンズ構成:
最小絞り:f16
最短撮影距離:
フィルター径:60mm
フード: 組込式フード
製造年:2008年~
製造本数:
レンズ構成:5群8枚 ダブルガウス型
最小絞り:f16
最短撮影距離:1m
フィルター径:E60
フード: 組込式フード
非球面(ASPH)レンズを2枚、異常部分分散ガラスを5枚、うち3枚は、超高価な高屈折ガラスを利用する。レンズ群のうち最後群のレンズがフローティングシステムとなっている。フォーカシングに応じて最後群のレンズがその他のレンズとの相対的な位置を変えるシステムで、近接撮影でも優れた描写性能を発揮する。
現行ノクティルックスレンズ、ライカ LEICA NOCTILUX M f0.95 50mm ASPHの価格は、実勢価格で約120万円程度である。
室内で何気なく試し撮りしたノクティルックスの作例を示す(写真をクリックすると大きめ3000x2000ピクセルの画像を表示する)。絞り開放値でこの描写力とは恐るべしノクチルックス、木製ウォールナットキャビネットの透明感溢れる質感描写が素晴らしい。
LEICA 50mm NOCTILUX f0.95作例
撮影データ: ISO200、f0.95絞り開放、1/90秒。サイズを変更しただけで無修正、撮ったままの写真。
同じ場面で、絞りをf1.4まで絞った作例はこちら(写真をクリックすると大きめ3000x2000ピクセルの画像を表示する)
LEICA 50mm NOCTILUX f0.95作例
撮影データ: ISO200、f1.4、1/60秒。サイズを変更しただけで無修正、撮ったままの写真。絞りをf1.4まで絞るだけで、周辺減光が緩和され、木製キャビネットの透明感が薄れた。
結論、ノクティルックスは絞り開放f0.95で、透明感、空気感、立体感を活かした写真を撮るべし。絞りをf5.6くらいまで絞り込むと、ナイフのようにとがった鋭い解像感体験できるが、f0.95の絞り開放時に見られる透明感、空気感のノクティルックスらしい特徴が失われ、「普通の高性能レンズ」になってしまう。
M10-D NOCTILUX-M 50mm f/0.95 ASPH、f0.95、1/4000秒、ISO 100、Adobe LightroomでRAW現像。2019年2月2日、東京 銀座にて撮影。画像をタップすると等倍写真を表示。
ピントの合っている箇所(こちらを見ている女性は足下の地面、靴、顔、洋服のファスナー、その右の男性のズボンの布)はシャープに表現されており、ピント面以外は大きくぼけていることが分かる。ぼけはサジタルコマフレアの影響により一つ一つの光源は円形ではないが全体としてみると臨場感が表現されている。被写体までの距離は3m前後であるがピントが合っている箇所は前後20cm程度とカミソリのように薄いピント面である。
ノクティルックスのその他作例はこちら
ノクティルックスのピントは甘いか?筆者は現行版のノクティルックス 50mm f/0.95を所有するが、初めて撮影した写真を見ると、少々ピントが甘いと感じた。120万円もするレンズでこのピントの甘さか?と思った。しかし、何枚も何枚も撮影を重ねるうちに気付いた。
一つは、ノクティルックス 50mm f/0.95のピントは非常に薄いということ、ペーパーピントであるということ。狙った箇所からピントが数cmでもずれると、すぐにぼけてしまう。見た目、ピントが合っていないように見える。故に、ライブビュー撮影ができないM3、M6などのフィルムライカや、M8、M9などのライカデジカメでは正確なピント合わせが難しく、ピントが甘く見えてしまうのではないだろうか。その点、ライカM240ではライブビュー撮影ができるので、正確にピント合わせを行うことができる。また、ライカM240にライカ 電子ビューファインダー EVF2を利用すると、ファインダーをのぞきながら、中央部分を拡大して正確にピントを合わせることができる。しかし、ピントを合わせたい箇所が中央に存在しない場合は、画面中央を被写体に向けてピント合わせを行いフレーミングを変更すると、それだけで、コサイン誤差により微妙にピントがずれてしまう。
ノクティルックスのピントの薄さは良い意味で異常である。だからピントが甘いように感じるのだろう。画面中央部分で、ピントがぴったりと合うと通常に利用する写真の拡大ではナイフのように鋭くピントがある。また前ボケ、後ろボケも、とろけるように美しくボケてくれる。
特に絞り開放で、最短撮影距離の1m付近で撮影する場合、正確にピント合わせを行うには、ライカ 電子ビューファインダー EVF2である。EVF2があれば、薄暗い場面でも、また背面液晶が見づらい明るい場面でも正確にピント合わせを行うことができる。正確にピント合わせを行うには、ピントリングである程度ピントを合わせておいて、その後は、構えたカメラを前後に動かしながらピント合わせを行うと、より正確に簡単にピント合わせを行うことができる。または、カメラを前後に数cmずつ動かしながら何枚か撮影しておくと、ピントがぴたりと合う写真を見つけることができる。
ノクティルックスは、点光源を撮影すると分かるが、その開放f0.95の明るさの大口径によるものか、画面周辺部でサジタルコマフレアが少々目立つ。コントラストの高い写真を撮影すると、サジタルコマフレアの影響か、画面周辺部ではピントが合っていたとしてもピントが甘く見えてしまうのは仕方ない。それがノクティルックスの欠点であり、その欠点こそが、ノクティルックスの魅力なのである。
ノクティルックスの絞りをf2~f4程度まで絞り込めば、画面全体で、鋭く尖ったピントを楽しむこともできる。絞り開放でボケを楽しむも良し、絞り込んで鋭く尖った高解像の描写を楽しむも良し。一粒で2度美味しいのがノクティルックス 50mm f/0.95レンズである。
ライカレンズは、レンズの明るさ(開放絞り値)別に次の名称が付けられている。
関連用語: NOCTILUX, SUMMILUX, SUMMICRON, SUMMARIT, ELMARIT, ELMAR, ASPH, レンズ沼, 周辺減光
関連リンク: ライカカメラ AG 現行レンズリスト(公式サイト)
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