ライカM10-Dを購入して約1ヶ月が経過した。ここでM10-Dのメリット、デメリットについてわかりやすく説明する。本ページは随時記事追加を行っていくので後日再訪して欲しい。
M10-Dには背面液晶画面が存在しない。どのカメラと比較するかの対象の違いによりそれはメリットにもなりデメリットにもなる。まずは比較対象である筆者のカメラ、レンズ遍歴を紹介しよう。本ページでは、筆者が実際に使ったことがあるカメラと比べたメリット、デメリットについて解説を行う。
ライカM10-Dはデジカメなのに背面液晶画面が無い。普通のデジカメには背面液晶画面でライブビュー撮影したり、撮影した写真を見たりすることができるがフィルムカメラ時代は背面液晶画面なんて付いて居なかった。ライブビュー撮影もできないし、撮影した写真をすぐに確認することもできなかった。デジカメなのにM10-Dには液晶画面が無いという変態カメラなのだ。フィルムカメラを使ってきた世代にとっては、そんな時代もあったねと、いつか話せる日が来るわと思っていたら、よくぞライカさんが作ってくれたと喜んでいる人も多いことだろう。
ライカが液晶画面の無いレンジファインダー デジカメを作ったのは今回が初めてでは無い。2016年には、M240をベースに背面液晶を取り除いたLEICA M-Dというデジカメが発売された。しかし、LEICA M-Dは電子ビューファインダーが使えず、RAW撮影のみ可能というシンプルなデジカメだった。今回紹介するM10-Dは背面液晶が無いにも関わらず、必要なら外付け電子ビューファインダーも使えるし、撮影した画像はスマホアプリを通じてリアルタイムで確認することもできる超先進機能を搭載した背面液晶無しデジカメなのだ。では、M10-Dに背面液晶が無いことによるメリット・デメリットを見ていこう。
M10-Dには液晶画面が付いてついていないので撮影直後に画像を確認することができず。撮影することだけに集中できるというメリットがある。撮影⇒背面液晶で画像確認⇒撮影というフローでなく、撮影⇒撮影⇒撮影と、撮影することだけに集中できる。ファインダーから被写体を覗き、構図を考え、絞りを操作し、被写体にフォーカス、シャッターボタンを押す、そのシンプルな動作だけで撮影を楽しむことができる。
過去のフィルムカメラと比べてM10-Dの素晴らしいのがシャッター速度とISOを自動で設定できる絞り優先撮影ができることである。JPGに加えてRAWデータも保存しておくと、このRAWデータのダイナミックレンジが予想以上に広いので多少の露出違いはカバーできる。リバーサルフィルムと比べると遙かにダイナミックレンジは広く、フィルムと比べてもダイナミックレンジは広いと感じる。またニコンD5などの最新プロフェショナル一眼レフと比べても同等以上のダイナミックレンジがある。
高感度耐性も大きく、ISO3200やISO6400でも十分鑑賞できるレベルの写真を撮影できる。夕暮れから昼間の直射日光の下まで幅広い範囲で絞り優先撮影だけで良い写真を撮ることができる。
絞り優先撮影時の、最低シャッター速度は「1/レンズの焦点距離」(50mmレンズなら1/50)や、「1/(レンズの焦点距離×2)」(50mmレンズなら1/100)などあらかじめFOTOSアプリを使って設定することができる。
M10-Dで撮影する際には、JPGファイル+RAWファイルの同時記録撮影をお勧めする。RAW撮影しておけば、多少露出がアンダー、またはオーバーになってもRAW現像を行うことにより正常露出に修正することができる。M10-Dはダイナミックレンジが広いのでJPG撮影で真っ暗と思っていたダークな箇所からきれいな階調を取り出すことができるのだ。アンダー露出には強いが露出オーバーには弱い、M10-Dで撮影する際には露出補正をちょいアンダー(-1/3など)で撮影するか、少し明るい箇所に露出を合わせることにより少し暗めに撮影しておくとRAW現像する際に使い勝手が良い。
M10-Dには液晶画面が無いので撮影直後にカメラ上で撮影写真を確認はできない、しかしライカ専用アプリFOTOSを使うことによりスマホ上で撮影画像を確認できるのでどうしても画像確認したい際にはアプリ利用できることがLEICA M-Dなどの過去の液晶画面なしデジカメと比べて大きなメリットだ。
最新デジカメと比べると撮影データをすぐに確認できないというデメリットはあるがFOTOSで直後に撮影データを確認できることはフィルムカメラと比べると大きなメリットである。背面液晶が無いのでリズムよく撮影集中できることは大きなメリットである。
フルサイズカメラ比較。NIKON D4 + 24-70mm/f2.8(左)、M10-D + Summilux 35mm/f1.4(右)
LEICA M10-Dのボディーはわずか660gしかない。他社デジカメのNIKON D5などのプロフェッショナルデジカメと比べると重さ約半分と小型軽量である。さすがにコンパクトデジカメと比べるとずしりと重いが圧倒的に美しい写真を撮影できるカメラの中では小型軽量と言える。
M10-Dはボディだけでなく、レンズもまた小型軽量である。例えば、フルサイズデジカメの標準レンズである50mm f1.4レンズを比べてみると次の通りである。
メーカー | Leica | Nikon | Canon | Sony |
レンズ名 | Summilux 50mm/f1.4 ASPH. | AF-S NIKKOR 50mm f/1.4G | EF50mm F1.4 USM | SEL50F14Z |
サイズ | φ53.5mm × 52.5mm | φ73.5mm × 54mm | φ73.8mm × 50.5mm | φ83.5mm × 108mm |
重さ | 約335g | 約280g | 約290g | 約778g |
広角系標準レンズ35mm f1.4レンズを比べてみると次の通りである。
メーカー | Leica | Nikon | Canon | Sony |
レンズ名 | Summilux 35mm/f1.4 ASPH. | AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED | EF35mm F1.4L USM | SEL35F14Z |
サイズ | φ56mm × 46mm | φ72mm × 71.5mm | φ79mm × 86mm | φ78.5mm × 112mm |
重さ | 約320g | 約305g | 約580g | 約638g |
それにしても、CANON、SONYのレンズはなぜこんなに大きくて重いのだろう。たとえどんなに素晴らしい写真が撮影できたとしてもレンズやカメラが巨大過ぎてはカメラを持ち運ぶ機会が減ってしまい撮影チャンスを逃してしまうだろう。その点、ライカならボディもレンズも小型軽量なので気軽にカメラを持ち出し撮影を楽しむことができる。
筆者が今まで使ってきたカメラの中では、プロフェッショナル向け一眼レフ NIKON D3を購入した際にそれまで使ってきたカメラと比べてダイナミックレンジが圧倒的広さだったことに驚いた。M10-Dの前に利用していたライカ M240はそのニコンD3、D4を超えるダイナミックレンジでさらに驚いた。黒潰れした中に色やディティールがあり、白の中に色が隠れているのだ。
M10-Dを実際に使った感想としては、M240と同等のダイナミックレンジの広さである。海外メディアの記載によると、M240のダイナミックレンジは13.3ストップ、M10-Dのダイナミックレンジは13.2ストップとわずかにM240の方がダイナミックレンジが広いようである。しかし高感度耐性においてはM240よりもM10-Dの方が位上回り、ISO 1600、ISO 3200、ISO 6400などの高感度撮影時にはM10-Dの方がノイズが少なくなる。
M10-Dのダイナミックレンジの広さを活用するにはRAW撮影が必須である。FOTOSアプリを使って保存データをJPG+RAWデータに設定する必要がある。M10-Dの(M240~も含めて)RAWデータの拡張子は .DNG である。RAWデータはAdobe LightroomやAdobe Photoshopなどの写真現像ツール、編集ツールを使って現像を行う。RAWデータ現像を行うことにより露出に失敗した写真、黒つぶれした写真を正常写真に現像できる。
LEICA M10-D、Summicron f/2 firstで撮影。中央部分の背景に露出が合ってしまったので人物が黒く潰れてしまった。
Adobe LightroomでRAW現像した結果、黒つぶれしていた人物が浮かび上がった、カメラの傾き、レンズ歪曲を修正。黒つぶれした箇所にも階調が残っており全体的に立体的な写真に見える。
JPG生データを露出補正した写真、黒つぶれしていた人物が浮かび上がったがRAW現像した写真と比べると白い箇所が色飛びしたり、また人物や背景など階調がなめらかでないことによりのっぺりとして平面的な写真になった。
ライカM10-DのRAWデータの拡張子は .DNG という名前のファイルで記録される。DNG形式はAdobeが提唱する標準RAWデータ規格となっておりPENTAX、カシオ、リコー、シグマ、Blackmagic Designなど国内外の主要カメラメーカーが採用する標準規格である。なお、カメラメーカー大手のNIKON、CANONは独自のRAWデータ形式を採用している。DNGデータはその仕様が Adobe Digital Native(DNG)ページで公開されているため将来にわたってデータが読み込みできることが保証されている。
JPGデータと比べてRAWデータでディテールが浮かび上がる理由、それは写真データの情報量の違いがあるからだ。JPGデータは仕様上1ドットあたりの色の階調数はRGB(Red Green Blue)各8データで表現するので0~255までの256階調である。つまり、1ドットを表現できる種類は256 × 256 × 256 = 約1680万色となる。一方M10-DのRAWデータDNGファイルの1ドットあたりの色の解像度はRGB(Red Green Blue)各14データで表現するので0~16383までの16384階調である。つまり、1ドットを表現できる種類は16384× 16384 × 16384 = 約4兆3980億色となる。各色、JPGデータと比べると64倍の階調データである。RAWデータを現像してJPGデータ保存する際にこの広階調を使ってJPGデータを作り出すため撮影後に露出補正や色味補正を行ったとしてもなめらかな階調の写真データを現像することができるのだ。
M10-D(M10、M10-Pも含めて)はISOの設定範囲は 100~50000までと、M240のISO範囲 200~6400と比べると低感度領域も高感度領域も広がった。高感度撮影できることにより低照度でも撮影ができることはもちろん、ISOを100に設定することによりSummilux f1.4やNoctilux f0.95などの明るいレンズを日中に開放絞り付近で使いやすくなったメリットは大きい。
M10-Dは背面液晶画面が無くても大丈夫、操作ボタンが少なくても大丈夫。スマホアプリFOTOSがあるから。FOTOSを使えば撮影した写真をスマホで見ることもできるし、スマホを操作してカメラ設定を変更することだってできる。M10-Dを購入して約1ヶ月が経過したが背面液晶や設定ボタンが少なくなり不便と思ったことは無い。
見た目はフィルムカメラ風に見えるシャッターレバー型のサムレスト、撮影する時だけ引き出して使うことにより指を引っかけてカメラのホールディングを良くする。M240など、過去のライカカメラでサムレストを使おうとするとアクセサリーホットシューにサムレストを付けて使ったが折りたたみ式でないためカメラバッグの中では邪魔になったりした。M10-Dのサムレストはカメラバッグにしまう際にはレバーを格納すれば大丈夫。
距離計連動タイプのMレンズのみを使うならVISOFLEXは無くても何も困らないがライカRレンズなど、距離計に連動しないレンズを使う際にはフォーカシングを行うために必要なのが外付けビューファインダーVISOFLEX。Mレンズを使う際は、VISOFLEXを使って拡大表示することにぃおりより精密なピント合わせを行えるというメリットもある。ただし、拡大表示できるのはファインダーの中心部分だけなので三脚に固定して中心部分以外にピント合わせを行う際は少々使い勝手が悪い。中心部分のみしか拡大表示できないのはM240も同じ、M10、M10-Pは外付けビューファインダーを使う際も中心部分以外の箇所を拡大表示可能。
ライカカメラ以外では、SONY、NIKON、CANONなどのミラーレスカメラにマウントアダプターを介してMレンズのオールドレンズを使えるが、距離計連動で素早いフォーカスを行えるのはライカ純正のカメラのみだ。ネット上の情報によると、M10-Dなどのライカカメラは、オールドレンズなどのフィルム時代のレンズにも対応するようセンサーがチューニングされているためSONYのミラーレスを使うよりもオールドレンズとの相性が良いらしい。これは都市伝説かも知れない、未検証の噂である。
国産デジタルカメラは毎年のように新機種が発表される。つまり、日本製デジタルカメラを購入すると、1年後にはほとんど価値の無い型落ち品になってしまうのだ。ライカにはそのような罠はない。ライカM10-Dには、今フォトグラファーが欲しい機能が全て搭載されており、今購入すれば数年は買い換える心配をする必要は無い。
一見したところ、ライカM10-Dの価格は高いと感じられるかもしれない。だが、フルサイズセンサー、高感度、高い有効画素数、広いダイナミックレンジ、ハイエンド機能がこの小さなボディに収められていることを考えれば、この価格は納得できるものである。ライカM10-Dは、ライカ社がこれまで100年の間に作ってきたカメラ、デジタルカメラ製品の中で、最も先進的なデジタルカメラだ。
どんなに美しい写真を撮影できたとしても撮影が楽しくなければ長続きしない。ライカは楽しい、ライカM10-Dで撮影するのは半端なく楽しい。楽しいのが一番。
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